KNOWLEDGE / 2026.11.04

容量市場と系統用蓄電池|メインオークションの流れと参加前の準備

系統用蓄電池の収益源というと、卸電力市場や需給調整市場が思い浮かびます。しかし、もう一つ見落とせない収益源があります。容量市場です。筆者は、容量市場を「将来の供給力そのものに値段をつける市場」と説明しています。

電気を売った量ではなく、いざというときに電気を出せる力に対して対価が支払われます。本稿では、容量市場の基本、蓄電池が参加するときの流れ、参加前に準備すべき論点を、法人・投資家の方向けに整理します。

容量市場の基本:4年後の供給力を買う

容量市場:4年後の供給力に値段がつく
メインオークションは、実需給年度の4年前に開かれます。

電力広域的運営推進機関(OCCTO)の資料によると、容量市場では、将来の一定期間の需要に対して必要な供給力をオークションで調達します。オークションにはいくつかの種類があり、中心となるのがメインオークションです。

メインオークションは、実際に供給力を提供する年度(実需給年度)の4年前に実施されます。たとえば2024年7月の説明会資料は、実需給年度が2028年度のメインオークションを対象にしています。つまり、いまから参加する事業者は、数年先の供給力として応札することになります。

メインオークション後の想定需要の変化などに対応するため、追加オークションも設けられています。さらに、前回の記事で触れた長期脱炭素電源オークションも、容量市場の枠組みの一部として位置づけられています。

蓄電池が容量市場に参加するメリットと留意点

蓄電池にとっての魅力は、収益の見通しが立てやすくなる点です。市場価格の変動に左右される取引収益と違い、容量市場の対価は、オークションの結果として事前に決まります。事業計画に、変動の小さい収入を組み込めます。

一方で、対価を受け取るには義務が伴います。実需給期間中は、供給力として提供できる状態を保つことが求められます。OCCTOの資料では、実需給期間中のリクワイアメント(要請に応じる義務)への対応が、制度の重要な項目として挙げられています。

蓄電池は、充電していなければ放電できません。容量を提供すべき時間帯に、十分に充電された状態を保つ運用が必要になります。他の市場への参加と、この義務をどう両立させるかが、運用設計の核心になります。

参加までの流れ

参加までの実務:実効性テストと停止計画
参加登録から実需給まで、手続きは段階を追って進みます。

OCCTOが公表している業務マニュアルは、手続きごとに分かれています。参加登録、メインオークションへの応札と容量確保契約書の締結、実効性テスト、容量停止計画の調整、電源等の差替えなどです。

流れを大まかにたどると、まず参加登録の申請を行います。次に、対象の実需給年度のメインオークションに応札し、落札すると容量確保契約を締結します。そのあと、実需給年度に向けて、実効性テストや容量停止計画の調整といった業務が続きます。

各手続きの期限や提出書類は、年度ごとの募集要綱とマニュアルで定められています。年度によって内容が改定されるため、参加を検討する際は、対象年度の最新版を確認してください。なお、具体的な物件の規模や立地の条件は、ENERGY BANKの物件一覧で並べて確認できます。

事業者が準備しておきたい4つの論点

事業者が準備しておきたい4つの論点
参加前の準備は、性能の説明・停止計画・契約の理解・他市場との組み合わせの4つです。

第一に、設備の性能を説明できることです。容量として何kWを提供できるのか、どのくらいの時間継続できるのかを、設備の仕様に基づいて示す必要があります。蓄電池の期待容量は、募集要綱の『期待容量等算定諸元一覧』(様式2)への入力で算定されます。

第二に、停止計画の管理です。点検や工事で設備を止めるときは、容量停止計画の調整が求められます。保守の予定を、容量市場の手続きと整合させる体制が要ります。

第三に、契約の理解です。落札後に結ぶ容量確保契約は、約款で条件が定められています。違反した場合の扱いも含めて、契約前に内容を読み込むことが欠かせません。なお、具体的な物件の規模や立地の条件は、ENERGY BANKの物件一覧で並べて確認できます。

契約でとくに確認したい義務と違約

容量確保契約で、最も重要なのは、提供すべき供給力を、実需給期間を通じて維持する義務です。蓄電池は、故障や劣化で出力が下がる可能性があるため、その場合の扱いを確認しておく必要があります。

なお、具体的な物件の規模や立地の条件は、ENERGY BANKの物件一覧で並べて確認できます。

義務を果たせなかったときに、対価の減額や、返還を求められる仕組みがあるかも確認します。設備の停止が長引いた場合に、どのような影響が出るのかを、約款の条文で把握しておいてください。なお、具体的な物件の規模や立地の条件は、ENERGY BANKの物件一覧で並べて確認できます。

契約の変更や、設備の差替えの手続きにも注意が必要です。設備を入れ替えたい場合や、運営者が変わる場合に、どのような手続きが必要になるかを、事前に知っておくと対応が早くなります。なお、具体的な物件の規模や立地の条件は、ENERGY BANKの物件一覧で並べて確認できます。

約款の条文は、専門用語が多く、読み解くのに時間がかかります。弁護士などの専門家にも相談しながら、自社の運用と照らし合わせてください。

第四に、他の市場との組み合わせです。需給調整市場の記事で紹介した商品との関係も整理が必要です。同じ設備の同じ時間帯を、複数の市場に重ねて売ることはできないため、どの時間帯をどの市場に振り向けるかを決めておきます。

実効性テストと停止計画の実務

容量市場では、登録した供給力が、実際に提供できるものかを確かめる手続きが設けられています。OCCTOの業務マニュアルにも、実効性テストの編が独立して用意されています。蓄電池の場合は、登録した出力と継続時間を、実際の設備で出せるかが問われると考えられます。手続きの詳細は、マニュアルの該当編で確認してください。

停止計画の調整も、実務では手間がかかります。年に一度の定期点検や、機器の交換工事は、事前に計画として提出し、調整を受ける必要があります。点検の時期は、メーカーの推奨や、設備の稼働状況によって決まるため、容量市場の手続きの期限と、保守の予定表を、同じ管理表で見られるようにしておくと便利です。

運用保守の事業者に委託する場合は、停止計画の提出や調整も、委託の範囲に含まれるのかを確認しておきます。担当が曖昧だと、提出の漏れにつながるためです。

費用を負担するのは誰か

容量市場の費用は、容量拠出金として、小売電気事業者などが負担する仕組みです。OCCTOの説明会資料にも、容量拠出金や、会計・税務の考え方に関する章が設けられています。蓄電池の事業者は、受け取る側として、会計・税務上の扱いも把握しておく必要があります。

受け取った対価の収益認識や、設備投資との関係は、事業の形態によって異なります。税理士など専門家と事前に確認しておくと安心です。

長期脱炭素電源オークションとの違い

容量市場の中には、長期脱炭素電源オークションも含まれます。両者は、混同されやすい制度ですが、性格が異なります。メインオークションは、実需給年度ごとに、必要な供給力を調達する仕組みです。これに対して、長期脱炭素電源オークションは、脱炭素電源への新規投資を対象に、容量収入を原則20年間得られるようにする仕組みです。なお、個別の条件の整理や進め方は、ENERGY BANKの専門スタッフに相談して進めることもできます。

新設の蓄電池は、長期脱炭素電源オークションを目指す方法と、メインオークションに応札する方法の、どちらも検討できます。どちらが適しているかは、事業の規模、設備の稼働開始の時期、資金調達の方針によって変わります。

長期の収入を重視するなら前者、柔軟に参加する年度を選びたいなら後者、という整理ができます。ただし、前者は要件が厳しく、落札も確約されません。両方の可能性を残したまま、設備の仕様や接続の手続きを進めることが、現実的な進め方です。固定資産に関する税務は、固定資産税(償却資産)の記事も参考になります。

買い手・投資家が確認する点

容量市場に参加している蓄電所を取得する場合は、容量確保契約が引き継げるかを確認します。契約の主体や、実需給期間の残り、これまでのリクワイアメントへの対応状況も重要な確認項目です。

対応に不備があれば、取得後に思わぬ負担を負う可能性があります。蓄電所の売買や譲渡の情報は、物件一覧ページにまとめています。容量市場への参加状況も、比較の視点の一つとしてご活用ください。

取得時に確認したい書類

蓄電所を取得する際は、容量市場に関する書類も確認の対象です。まず、容量確保契約書と、約款の写しを入手します。契約の当事者と、対象となる実需給年度、提供する供給力の内容を確認してください。

次に、実効性テストの結果や、容量停止計画の提出の履歴です。これまでの手続きが適切に行われてきたかは、取得後のリスクを見極める材料になります。

運転の実績も重要です。要請に応じて供給力を提供できたのか、設備の不調で提供できなかった期間はあるのかを、運用の記録から読み取ります。

不明な点は、売り手に質問し、回答を書面で残しておきます。取得の手続きは、デューデリジェンスの一部として、専門家と進めることをおすすめします。

制度の見直しに備える

容量市場の制度は、検討会などで継続的に見直されています。OCCTOは、募集要綱や約款の改定にあたり、意見募集を行ってきました。制度の変更は、収益の見通しや義務の内容に直接影響します。

公表資料や意見募集の動向を定期的に確認し、変更があれば事業計画を見直す体制を整えておくことが大切です。

参加を決める前の自己点検

参加を決める前に、次の点を自社で点検してみてください。まず、設備の仕様書から、提供できる出力と継続時間を説明できるか。次に、他の市場へ振り向ける時間帯と、容量市場の義務を果たす時間帯を、運用の計画として描けるか。さらに、停止計画を管理する担当者が決まっているか、という点です。

続いて、契約と会計の面です。容量確保契約の約款を読み、義務に違反した場合の扱いを理解しているか。受け取る対価の会計・税務上の扱いを、専門家と確認しているか。これらが整っていない段階で応札すると、落札後に慌てることになります。

最後に、資金の面です。容量市場の対価は、実需給期間に入ってから受け取るものです。設備の導入にかかる資金を、どう手当てするのかは、別途考える必要があります。対価が入る前の期間の資金繰りまで見通したうえで、参加を判断してください。

参加しない選択肢も含めて考える

容量市場への参加は、すべての蓄電池に適しているとは限りません。義務を果たすために、他の市場での運用に制約が生じるためです。市場での価格差が大きく見込める設備では、参加しないほうが有利になる場合もあります。

反対に、市場の変動を避けたい事業者や、融資の審査で安定した収入を示したい事業者には、参加の意味が大きくなります。自社の事業の方針に照らして、参加の可否を決めてください。

参加しない場合でも、制度の動向は追い続けることをおすすめします。制度が見直されて、条件が変われば、判断も変わるためです。

最新の情報は、OCCTOのウェブサイトで公表される募集要綱、業務マニュアル、説明会資料から入手できます。毎年度、内容が更新されるため、参加を検討する年度の資料を、必ず確認してください。

説明会や意見募集の機会があれば、積極的に参加することをおすすめします。制度の背景や、運用の細かな考え方を、直接知る機会になります。

制度への理解が深まるほど、設備の仕様や運用の計画を、無理なく組めるようになります。早い段階から情報を集め、社内で共有していくことが、参加の準備の第一歩です。

まとめ

容量市場は、実需給年度の4年前のメインオークションで、将来の供給力を調達する仕組みです。蓄電池にとっては、変動の小さい収入を得られる可能性がある一方、実需給期間のリクワイアメントへの対応が求められます。性能の説明、停止計画の管理、契約の理解、他市場との組み合わせの四点を整えたうえで、最新の募集要綱を確認しながら判断してください。なお、個別の条件の整理や進め方は、ENERGY BANKの専門スタッフに相談して進めることもできます。

参考・出典

投資に関するご注意

本記事は情報提供を目的としており、投資成果を保証するものではありません。最終的な判断は、個別資料と専門家への相談を踏まえて行ってください。

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